みなさん、モーター・スポーツはお好きですか。たとえばF1。
今シーズンもいよいよ大詰め。10月18日のブラジルGPではついに今年のドライバーズ・タイトルとコンストラクターズ・タイトルが決まりしたね。
ところでF1日本GPグランプリは、ご覧になりましたか? 今年は中秋の名月の翌日、10月4日でしたね。

私こと、まだAneCan手前の若かりしころアイルトン・セナの大ファン、いえ熱狂的信者の一人だったんです(歳がバレそう・・・汗)。
あぁ、音速の貴公子セナ。 
・・・94年5月のサンマリノGPで彼が死んでから、私はずっとF1を封印していました。
私の中ではセナは永遠に世界一速く、世界一美しいF1パイロットでしたから。
そして今年、長かった15年の喪をといて久しぶりに観に行って来たのです。
聖地 鈴鹿サーキットへ帰ってきたF1を♪

F1の世界は日進月歩。15年のご無沙汰では車もチームもドライバーも様変わり。
でも、やっぱり美しいですね、F1って。
あの爆音、あの匂い、あの疾走には鳥肌たっちゃう。

限界を極めた技術に必然の形が与えられ、それが正確に作動し、期待されるべきパフォーマンスを演じきる姿には神聖な美しさを感じてしまいます。
私の中でこれは機械にも、スポーツにも、食についても言えること。
F1がマシンと人の究極の対話なら、日本酒は微生物と人の究極の対話。日本酒の“並行副発酵”という製造技術は
(注1)世界に類を見ない極限を極めた醸造技術なのですもの。

唐突ですけど、『F1』ってお酒があるのご存知ですか。
山形の米鶴酒造さん(蔵元さんのHPはこちら)の純米大吟醸です。ふくよかな吟醸香、軽快でさわやかな味わいのこのお酒は昭和44年に発売された吟醸酒の草分け的存在。酒造技術の限界に挑む大吟醸酒は車作りにおけるF1レーシングマシンに匹敵する技術的意義から命名されたそうです。
・・・にしても、今から40年前に『F1』を名乗るとは。

1960年代といえば、ジム・クラークジャキー・スチュアートの2人が “フライング・スコット”(空飛ぶスコットランド人)の異名をもってサーキットを席捲していた時代です(私はまだ生まれて無いです、念のため)。その後1980年代後半、世界のホンダが初めてF1のタイトルを獲得した時、米鶴の蔵元さんは本田宗一郎氏(注2)にこの『F1』をお祝いに贈られたというエピソードがあります。いいお話でしょ。
貴方の彼、車が好きだったら教えてあげてね。

さて、ここからが本題。
鈴鹿サーキットって三重県にあるのご存知ですょね。
私にとって三重県はお気に入りの宝箱。ご披露しましょう、My favorite things in MIE:

1.  モーター・スポーツのメッカ「鈴鹿サーキット」 
2. お伊勢参りの「伊勢神宮
3. 世界遺産「熊野古道
4. アオウミガメの上陸で有名な「七里御浜
5. 「日本の棚田百選」に選ばれた「丸山千枚田
6. 忍者の里、松尾芭蕉の生誕地 伊賀上野
7. 紀和町のトロッコ電車
8. 日本一やかましい祭「石取祭
9. なばなの里」のイルミネーション
10. 海女のまち 相差(おうさつ)
11. 熊野市新鹿湾の「ケンケン漁とタコかご漁
12. その手は桑名の焼きハマグリ ☆
13. 的矢カキは殻つきのまんまにレモンをかけて ☆☆
14. 味の芸術品、松坂肉 ☆☆☆
15. 食卓の王様 伊勢エビ ☆☆☆☆☆
16. 貝の女王 伊勢志摩のアワビ ☆☆☆☆☆☆

いかがですか、行ってみたくなりません?

神がおわし、ロマンと神秘につつまれ、豊かな自然が至高の食材を育む三重の国。
古より「御食つ國」(みけつくに)と呼ばれた三重県は天皇家御用達の高級食材にあふれるグルメの国なのです。

そう言えば最近いわゆる“グルメ”ってご無沙汰ですねぇ。

伊勢海老かぁ ・・・(ため息)
彼らこそグルメの最右翼よね。普段からカニや、エビ、ウニばかり食べてるんだから。お刺身の透き通ったピンク色はプリプリ。舌の上でとろけるような甘味で口中が幸せに。伊勢海老のお味噌汁ってどうしてこんなに濃厚で美味しいのって感じ。豪快にグリルにすればあれほど絵になる海産物はないわ。洗練された旨みで言えば
やっぱりロブスターより伊勢エビでしょ。

アワビかぁ・・・(ため息)
お刺身のあの瑞瑞しさとコリコリの歯ごたえ。海の慈愛を感じる繊細なお味。一度でいいからブツ切りでお腹いっぱい食べてみたい!寿司屋さんでも勇気いるわよね、「アワビっ」って一言。最後まで言い出せなくて、結局食べた気になって我慢したりして。踊り焼き!? っくぅー、これも死ぬまでに3回は食べたい!乾しアワビは旨みの濃縮宝庫。中華ならフカヒレよりも私は断然乾しアワビ。伊勢志摩の海は岩場が多く、アワビが食べる海草が密生して美味しく育つのに最適な環境なんですって。
海女さんたちがす潜りで獲るのょ。

松坂牛かぁ~・・・(ヨダレ)
“松坂牛”を名乗るには品質の定義があるのですって。 (1)雲出川から宮川の間で、(2)6ヶ月以上飼育された、(3)メスの処女和牛で、(4)肉質は特選、極上、上のものに限るとのこと。メスの処女牛ってのがなんか抵抗あるけど・・・(許せ 松坂)。その飼育の手間隙のかけようは半端じゃない。大豆粕、ひき割り麦などのたくさんの良質は飼料を与え、食欲がないときはビールをおごり、日光浴やマッサージ、午後の散歩などまで。うちの犬だってそこまでしないわ(笑)。きめ細かく入ったサシ、デザイン画のような断面の繊細な美しさはまさに芸術品。柔らかく、甘く、濃く、深く豊かな味わい。
I want Matsuzaka!
画像提供 三重県観光連盟

あぁーもうダメ。誰か私を三重に連れてってぇーなんて妄想を抱いていると、
なんとそんな夢を叶えてくれる機会をバッカスが与えたもうたのです。

三重の酒を愉しむ会

最高級の松坂牛やアワビをはじめとする海の幸などをふんだんに使った三重の食材を堪能するフルコースを、ご当地三重県の日本酒とともに楽しめる。そんな夢のようなディナーがあったのです。

ときは 長月十七日、ところは銀座マキシム・ド・パリ

今でこそ正統派のフレンチは往年のブームほどではありませんが、銀座マキシムと言えば、19世紀から数々のドラマを生み続けたパリの由緒あるレストラン「マキシム」の直系。
パリ本店の華麗な味と雰囲気をそのまま再現したフレンチの老舗中の老舗です。
そのマキシムで、神々をもてなしてきた三重の山海の恵みを、共に歴史を刻んできた三重のお酒とともにいただく。
三重県ってやることがお洒落だわ。さてさて、三重の高級食材とお酒がマキシムでどんなハーモニーを聴かせてくれるのか。期待と興味に少しおめかしをして出かけて参りました。

画像提供:無料イラスト素材 イラストバンク 
     おえかき工房

なっつかしぃー、マキシム。遠い昔に彼にクリスマスしてもらったっけぇ、っと余談はさておき、さすがに老舗の風格は今も健在。なにしろパリ本店は100年、銀座も40年の歴史を刻む紳士淑女の社交場です。


まずはお酒のご紹介から。
三重県には現在46の酒蔵がありますが、今回はそのうち6蔵が参加されていました。
それぞれ3種のお酒を厳選して持ち寄り、蔵元自らのワゴン・サービスで料理に合わせたお酒をお客さまのお好みに応じてサーブされるという趣向です。

参加蔵元さんとお酒のご紹介:

後藤酒造場(桑名市)

青雲 「颯(はやて)」純米吟醸 青雲 大吟醸 青雲「颯(はやて)」山廃純米
三重県産山田錦と三重県酵母で醸した純米吟醸。落ち着いたベリー系の香りと芳醇な旨みが特徴。 三重県産山田錦で醸した大吟醸。甘い果実を思わせる華やかな香りと爽やかで柔らかな喉ごしはあくまで上品でクリアー。 木の葉を思わせる香りと自然の乳酸が持つ心地よい酸味をもち、しっかりとしたキレのあるコクがお料理を引き立てます。



石川酒造(四日市)

噴井 純米吟醸
石川改詰(あらためづめ)
噴井 大吟醸 噴井 純米
淡麗できれいな飲み飽きしないタイプ。冷やしていただくのがおすすめ。 原料米を削って削って半分以下に磨き上げ、丁寧に仕上げた大吟醸。冷やしていただけば、その爽やかな辛口が一段と引き立ちます。 米と米こうじを使って仕上げた純米酒。爽やかさの中に、しっかりとしたコクを感じて下さい、冷やして飲めばこたえられません。


清水醸造(鈴鹿市)

作(ざく)純米大吟醸 滴取り 作 雅乃智(みやびのとも)
中取り 純米吟醸
作 槐(かい)純米
滴取りとは、袋に醪を入れ余分な圧力をかけずに、滴り落ちる酒だけを集める特殊な搾りの方法です。この手間ひまをかける目的は、味わい豊かながら、味の透明感を求めるためです。 華やかで優しい香り。思わず心が躍るような気持ちにさせてくれるお酒です。中取りとは搾りの行程で最初の「あらばしり」と、最後に圧力をかけて搾る「責め」を含まない中間部分のことを言います。味わいが安定し、かつ透明感のあるのが特徴です。 口に含むと爽快な風のような酸が感じられます。その後、穏やかな香りと味わいが広がり、やがて消え去ります。


河武醸造(多気町)

鉾杉 大吟醸 「黒」 鉾杉 しぼりたて 純米酒
無濾過原酒 生酒
鉾杉 ワイン風純米酒 「KH」
瑞瑞しくて爽やかで品のある香りがあり、骨格の男らしい余韻を感じて心地よい。料理は何でも合い、素材を生かす味わいがあります。 トロピカルフルーツを思わせる香りがあり、力強さとエレガントさを兼ね備えたまろやかな味わい。一口目、二口目と後引く旨さがあります。 果実や花の熟した香りで個性的。香りとは全く異なる軽快な酸味を伴ったロワールの白ワイン風の味わいで料理に良くあい楽しめます。


大田酒造(伊賀市)

純米大吟醸 半蔵 大吟醸 半蔵 伊賀山田錦 純米吟醸 半蔵 神の穂
杜氏がもろみのつぶやきに語りかけこの一滴に愛情と情熱を注いだ心と技の結晶。その味わいは、優雅で奥深く、まさに吟醸酒の極みといえる逸品。 澄んだ空気と自然に恵まれた伊賀。この豊かな土地から収穫された山田錦を兵庫・但馬杜氏上田忠弘氏が醸した逸品。大吟醸ならではの上品な味わい。 三重の新しい酒米「神の穂」で醸した甘くフルーティなお酒。上品な吟醸香、まったりとした芳醇な味わい。躍動感溢れる香りと旨みが口の中に広がります。


澤佐酒造(名張市)

参宮旅海道アンプレブ 参宮 純米大吟醸 宝殿 参宮 後継ぎの酒 雄町 無ろ過生
通常の日本酒の約4倍の酸味と甘味のある特殊仕込みの純米吟醸酒。まるで白ワインのような風味を楽しめます。 蔵元杜氏が全身全霊をかたむけ造り上げた究極の酒。芳醇な味と香りが口の中にひろがります。 十五代目の後継ぎが蔵元杜氏として醸したお酒。米の旨みを存分に楽しめます。


いかがですか?
このお酒たちが三重ご自慢の高級食材とどんな競演を見せてくれるのかしら?
期待は、いよいよ高まるばかりでしょう?

そそくさと着席するとメニューが。

  



いたいたぁ、アワビくん、ハマグリくん、キンメ鯛くん、松坂くん・・・よしよし。
でも、伊勢エビくんは? 私の伊勢エビくんはどこ? 
残念、伊勢海老くんの旬は10月から12月。くぅーっ、ひと月早まったのねぇ無念。確かにご案内状にはアワビくんや松坂くんとは書いてあったけど、伊勢エビくんは今回は載ってませんでした。これは私の早とちり。「三重=伊勢海老」の固定観念に凝り固まった妄想のまま銀座までやって来ていたのでした。でも、いいや。代わりに宝彩エビくんをいただけるのですから。こちらももちろん美味。

コース料理って外側のシルバーから使ってくのょね。ひと皿ひと皿厳かにサーブされるのょね。
なんか、もぉージレったい、早く食べたい。「ねぇお兄さん、まとめてドォーンっと持って来てちょうだい!それとお箸も一膳お願い」と叫ぶ胃袋の声をなだめつつ、お行儀よくお上品にいただいて参りました。

それではディナーの模様をスライド・ショーでご案内しますね。三重の名産と三重のお酒のコラボ in マキシム、ご覧下さい。

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マキシムの「三重の酒を愉しむ会」は今年2回目。初回は6月でした。
昨年は東京神楽坂の高級フレンチ・レストラン「ラリアンス」で2回。
三重のお酒が県外でイベントを開催するのは今年で2年目なのですが、なぜ「ラリアンス」や「マキシム」のように高級レストランなのか。
単に“奇をてらう”とか“意外性に訴える”とかではありません。それには深淵な理由があるのです。

ご紹介した通り、三重は古くより天皇家御用達の高級食材が溢れるグルメの国。「御食つ國」(みつけくに)と呼ばれたお土地がらです。

思い出してみましょう。松坂牛でしょ、的矢湾の無菌カキでしょ、伊勢エビ、アワビに黒潮が運ぶマグロ、ブリ、鰹。さらに紀伊山地は日本でも有数の多雨地帯。清冽で豊富な水は森を河を湾を豊かにし、鮎、アマゴ、天然のウナギ、鯉、スズキ、ボラ、ハマグリを美味しく育てます。山々には,マツタケ、椎茸はもちろん、猪や鹿、雉までも。

三重の酒蔵たちは古くより、これらの豊富な山海の珍味や高級食材に合う高品質な地酒造りの研究開発を進めながら三重の食文化に貢献してきたのです。特に昨今では洋食や中華に合う日本酒にも力を入れたり、三重県科学技術振興センターでは独自の三重酵母や低アルコール酵母などを開発するなど、高品質で様々な料理に合う多様な酒が造られています。

「マキシム」や「ラリアンス」でのセレブなデイナー・パーティはいわばその発表会。
三重の酒がいかに洋食に合うかを知って貰うためのプレゼンテーションの場なのです。
“日本酒=和食”の既成概念の殻を打ち破ろうとする三重の酒蔵たちのチャレンジです。
価格設定もかなりお高め。いきおい参加者層も絞られる。バリバリのフレンチ×日本酒の評価も賛否両論を招きそうなところ。かなり勇気の要る試みだと思います。
でも、日本酒の新しい愉しみ方を探求し、日本酒が、“料理というストライク・ゾーン”の広さでは“世界一の食中酒”であることを身をもって証明せんとする三重の蔵元たちのリーダーシップに敬服です。
さらに、これは高級食材に恵まれた「御食つ國」三重であればこそ出来ること。
今後の展開がすごく楽しみです。

では最後に、次回の「三重の酒を愉しむ会」を期待しつつ、ひとつだけ気になったことが・・・。

個々のお料理は文句なしに美味しかったです。さすがマキシムというべき。
お酒もそれぞれがまさに逸品!蔵元渾身の秀逸な作品ばかり。18種類の技と心の結晶を存分に堪能させていただきました。

でも、もしあの場に海原雄山(注3)がいたら何て言ったでしょうか? 気になるのです。
私は4皿目の「キンメ鯛のロースト エキストラバージンオイルとバルサミコ」の時に白が。最後の「松坂牛のポワレ トリュフ・フォアグラソース各種キノコ添え」の時に赤ワインが欲しくなってしまったのです。
ソーズがあまりに “ど フレンチ”だったから。これって、私だけだったかなぁ? 固定観念? 条件反射?

“グルメの国”三重の食材とお酒、次回はどこでどんなマリージュを披露してくださるのか。
私のこの杞憂?はそれまでのお楽しみということで・・・

ではでは

by Takako







(注1)http://www.ginga.or.jp/~seinen/act/pdf/56.pdf
平成17年7月8日開催。岩手県組合青年部等講習会における月の輪酒造店・杜氏の横沢裕子氏の講演内容から抜粋:
(略)発酵学の先生に坂口謹一郎という方がいますが、その方が「日本の酒」という著書の中でつぎのように語っています。「世界の歴史を見ても、古い文明は必ず麗しい酒を持つ。すぐれた文化のみが人間の感覚を洗練し、美化し、豊富にすることができるからである。それゆえ優れた酒をもつ国民は優れた文化の持ち主である。」。日本酒の製造方法というのは世界でたった1つしかない並行副発酵という形式をとっております。ワインの場合はすでにぶどうに糖分がありますので、糖化という工程はありません。日本酒の場合は蒸した米を糖分に変える糖化という工程があります。そしてその糖分を酵母が食べてアルコールに変える発酵という工程があります。それが1つのタンクで並行して行われるという形式が並行副発酵です。これは私たちの祖先が国酒として作り出し考えてきたもので世界のどこにもない優れた技術の酒であるといえます(略)。

(注2)本田宗一郎 Wikipedia

(注3)海原雄山
人気マンガ「美味しんぼう」の登場人物の一人。主人公 山岡士郎の実の父親でありながら因縁の対決相手。書家、陶芸家、美食倶楽部を主宰する。