初めてお目にかかります。このたび、コラムを書かせて頂くことになりました、
日本酒サービス研究会(SSI)認定利酒師、酒匠の呑美姐(のみねえ)と申します。
日本の文化そのものである、日本酒の素晴らしさ、造り手である蔵元さん、そして美味しい飲み方、歴史、雑学などを定期的にご紹介していけたらと思っております。
末永くお付き合いくださいませ。何卒よろしくお願い致します。

第1回目は秋田県由利本荘市にある、齋彌酒造店(さいやしゅぞうてん)さんの「雪の茅舎」(ゆきのぼうしゃ)をご紹介いたします。
齋彌酒造店さんは、秋田県由利本荘市にあり、107年前の明治35年(1902年)に創業されました。
全国新酒鑑評会では、平成に入ってから12回の金賞受賞、秋田県では第1位という素晴らしい成績を残されている蔵元さんです。
杜氏をはじめ、蔵人さん達が自ら酒造好適米の「秋田酒こまち」を栽培し、冬に降り積もった雪付け水の恩恵を受けて、大地の一滴であるお酒を生み出しています。
純米酒以上のお酒には、「櫂入れをしない」「濾過をしない」「割り水をしない」の「三無い造り」と特徴としていて、酵母の働きにまかせて、長い時間をかけてじっくり醸し、そのお酒をそのまま加工することなく、加水もせずに出荷するという、お酒本来の味を大切にしている蔵元さんです。
「雪の茅舎」シリーズは齋彌酒造店さんで造られているお酒の中でも上質なお酒に使用されている銘柄で、蔵を訪れたある作家が「雪に埋もれた茅葺き屋根の農家が点在している冬景色」から命名したそうです。(齋彌酒造店さんHPより)早速、雪の茅舎シリーズ「山廃純米」をテイスティングさせて頂きました。
グラスに注いだ瞬間から、いい香りが立ちのぼります。このように、飲む前に感じられる香りを「上立ち香」(うわだちか)と言いますが、このお酒の上立ち香はバナナや、リンゴなどの果実香、そして、少し後から爽やかな青みがかった香りを感じることができます。
口に含んでみると、きめ細やかな酸味と、まろやかで透明感のある甘みがとても心地よく、中盤から日本酒ならではの旨味を感じ、そのまま余韻へと向かいます。
山廃仕込みながら、重たさは感じられず、フレッシュな印象さえ受けます。
雲の間から大雪原に一筋の光がさし、パッと明るくなるような印象を持ち、秋田の水の良さ、お米のよさ、そして蔵人さん達の意気込みを感じさせるお酒でした。
大切に造られたお酒は、お酒がきちんと教えてくれますよ。
そして、今回、このお酒をどうしてもお伝えしたかった理由があります。
この「雪の茅舎」をこよなく愛した女性がいます。
同じ利酒師仲間で、私も彼女からこのお酒を紹介してもらいました。
お料理もとても上手で、仲間で集まると、お子さん達が好きそうなおかずを小さく切って持ち込んでくれるような、気配りのできる女性でした。
和服が好きで、イベントの時にはいつも着物姿でお客様を和ませてくれた彼女に憧れていました。
そんな彼女が平成21年2月22日、旅先で不慮の交通事故に遭い、突然逝ってしまいました。享年41歳、ご主人とまだまだ小さいお二人のお嬢さんを残して。
亡くなった後、「大好きな日本酒を広めたい!」と頑張っていた彼女のブログから、齋彌酒造店さんで懇意にされていたOさんの名前を見つけ、連絡を取らせて頂き、今回コラムを書かせて頂くことができました。
Oさんは「彼女はお酒を決めてから、それに合うお料理を作るタイプ、少しどっしり目の山廃タイプのお酒がお好きでした」と語ってくれました。
SSIに残されていた彼女の「雪の茅舎 山廃純米」のコメントを紹介させて頂きたいと思います。
「ふわっと広がる爽やかな果実の香りが飲む気をそそります。柔らかな酸味と飲飽きしない味わいは、薄味のおでんと一緒が最高!」と書かれています。
やはり、彼女もこの果実香を好んでいたのではないかと感じさせられるコメントです。
普通に生活をしていたら、きっと日本酒の普及活動を一緒にしていたと思うと、本当に残念で、悔しくてなりません。
最後に、今回コラムを書くにあたり、資料等を送ってくださった齋彌酒造店のOさん、彼女のコメント掲載のために協力してくれたSSIのIさんにもこの場を借りて、心よりお礼を申し上げます。
あまりに突然のことで、彼女がいなくなってしまったという事実をまだ受け止めることができませんが、明るい彼女のことなので、きっと天国でもお酒の大好きな神様と一緒に「雪の茅舎」を飲んでいると思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。合掌。
日本酒サービス研究会認定利酒師 酒匠
呑美姐こと兵道俊美